【Photocentric導入事例インタビュー】株式会社ニューエラーとLC Magna | 導入で創業85年の企業に可能性が生まれた新しい分野でのものづくり

マグネチックスイッチを製造する会社として1939年に東京で創業した株式会社ニューエラーは、2023年にLC Magnaを導入しました。当初の目的は、社内で抱える製造時のコスト削減や納期短縮だったそうですが、LC Magnaを使ったモノづくりを進めていくなかで、「カスタマイズに強い」という特徴を生かして、これまでは想像もしなかった分野への進出も現実的になってきたそうです。

LC Magna導入に至るまでの経緯や、導入前は見当もつかなかった医療分野への進出まで、株式会社ニューエラーの執行役員、品質保証部長にあたる泉圭介さんと、営業部、FAユニットグループ係長の松岡公樹さんにお話しを伺いました。

1. LC Magnaの導入の背景と購入を決めた理由

3DPC:LC Magnaを導入することになった経緯を教えてください。

泉さん:2つあります。弊社には、人と一緒に働く協働ロボットの電動ハンドがあるのですが、リスクアセスメントの観点から、安全面を考慮して、突起物などから人間を守る樹脂のガードを作る必要がありました。当初は削りやインクジェットで検討していたのですが、在庫管理が大変で。3Dプリンターであれば、欲しいときに手に入るので、購入を決めました。製品によっては、お客様の会社名やロゴを入れるサービスもしています。「プリンター」だからこそできるサービスで、お客様から実際に要望があった場合にも対応できるんです。

村岡さん:2つ目は、手元にプリンターがあるメリットです。弊社開発部が新製品開発にあたって試作品をつくるのですが、今までだと加工業者さんからの試作品を待つ時間がどうしても発生してしまっていました。ところが、プリンターが手元にあればデータをいれて10〜20時間ですぐに試作品が手に入る。実際に手にしてみれば、「こういう製品か」というイメージも湧きやすい。しかも、お客様に見せるときにも図面よりはるかに説明しやすいんです。

ガード付きの電動アクチュエーター

会社名やロゴをいれたケース

3DPC:LC Magnaにはどんなことを期待して購入されたのでしょうか。

泉さん:やっぱりコストですね。試作って意外とお金かかるんですよ。しかし、3Dプリンターは1度導入すれば、2回目以降は材料費だけでできてしまいます。一方、1番メリットがあるのは時間かもしれません。図面の作成から見積もりの発行、戻ってきた見積もりを元にいざ制作を初めて……という作業に今まで1ヶ月くらいかかってましたが、今は図面さえできあがれば、すぐに造形に取り掛かれる。1回目の試作が早ければ、途中で調整や作り直しが必要になっても時間はそんなにかからない。「タイムイズマネー」とはこのことで、開発スパンをぐっと凝縮できることは間違いなくメリットだと思います。

しかも、LC Magnaのプラットフォームがあれば作業が1回で済むことも多いんです。作業エリアが大きいからプラットフォームの中にいろんな部品を積み込むことができます。FDMみたいに1個ずつやる方法だと作る分だけやはり時間かかってしまいます。光の場合、通常だと樹脂を溜めて下から硬化させてあがっていきますが、小さな汎用的なプリンターだと、光の硬化したところ(パーツ)をひっぱったときに、ぱちっと外れてしまうことがあるんです。LC Magnaはその心配もないので、大きい造形でもきれいに出せるのかなと思います。

LC Magnaの作業エリア

2. LC Magnaを選んだポイントと使いやすさ

3DPC:どのような選定プロセスを経て、この機器を選びましたか?

泉さん:インクジェットや光、FDMなど数ある中で、樹脂の造形がきれいなものが欲しいと思ってました。FDMは線が気になることがあるので、消去法でインクジェットか光となったとき、インクジェットは紫外線にあたると黄色くなってしまう。微細なものができるものの、どうしても色に弱いんです。そんな中、LC Magnaのホワイトテンシルという材料が25ミクロンからできるので、いいなと思いました。いろんなものが造形できるので、導入してよかったです。

3DPC:LC Magnaの操作性や使いやすさはどうでしたか?

泉さん:データをいれてスイッチを押すだけなので、操作に大きな違いはないのですが、ほぼイメージ通りのものが造形できています。ソフトウェアに関してもすごく使いやすいです。サポートがオートで搭載されているので心強い。初めてやったときにマニュアルでは絶対サポートはいれられないと思いました。今でこそマニュアルでの扱いにも慣れましたが、最初にオートで、傾きとかサポートの入れる位置などをある程度やってくれたので助かりました。だんだん慣れてくると、「もっとこうした方がいいかも」という部分も出てくるので、その場合はマニュアルで対応しています。この方法が今は一番やりやすいです。

サポートを操作している様子

3. 「3カ月かかる加工が10時間に短縮」

3DPC:この機器を導入したことで、従来の製造方法と比べてどのような効率の向上がありましたか?

泉さん:今まで1つの部品の加工に十数万円かかっていましたが、LC Magnaの樹脂代にかかる千円程度だけになりランニングコストを大幅に削減できています。また1次試作だけで考えると、1ヵ月~3カ月かかる加工が10時間に短縮されました。1番初めに樹脂で作る試作は、コストよりも時間が大事なんです。すぐにできて、すぐ触れる。そこが1番のメリットかなと思います。

4. LC Magnaでつくれるものとその精度とは

3DPC:現在はLC Magnaを使ってどのような製品や部品を造形していますか?

泉さん:主に吸着プレート、ハンドカバー、ケース、配線部品の4つです。吸着プレートは、実際に弊社のロボットに取り付けてテストをしています。金属で削り出す場合、廃材が多く出てしまうので無駄が多いですが、3Dプリンターを使用すると材料ロスを削減できます。お客様にも評判が良く、様々な形状に対応できることも魅力です。例えば、お客様のワークに合わせて、「手を斜めに2本」や「片側に1本」など、プレートを変えることで多様に対応可能です。カスタムなので、お客様が希望する形状をすぐに提供できます。

吸着プレート

村岡さん:当社はワークの治具の形状を考え、設計から試作品、そして生産まで行います。お客様が希望する特定の爪の形状のSTLデータをいただければ、その形状を造形できます。弊社はロボットのメーカーではありませんが、将来的には、ロボットとアクチュエーターを組み合わせて全体的なシステムを提供できればと思っています。テスト用としてワークの評価を行い、実際に吸着グリップができることをお客様に提案したいです。

ハンドカバーは冒頭でお話しした通りなのですが、ケースも会社名やロゴを入れて提供しています。また、配線部品の本体もプリンターで作っています。3D CADデータを渡すより、実物を触りながら確認した方が、配線の取り回しや細部の作り込みも確認できて、図面ではわからないことまで一気に解決できます。「ここがあたるから作り直そう」とか。外注すると試作で10万円かかるものがプリンターだと数千円で1日でできるんです。すぐできるのがありがたい。

サンプル部品

3DPC:造形物の品質や精度についてはいかがですか?

泉さん:樹脂なので当然ひけや曲がりはつきものですが、意外とホワイトテンシルやデンタルホワイトは造形データに対して精度がいいと思います。弊社は硬いものばかり製造していますが、ゴムのような柔らかいものもLC Magnaでできるとのことなので、ゆくゆくはそういったものにもチャレンジしていきたいです。

3DPC:他の企業や業界へのLC Magna導入を検討している場合、どのようなアドバイスや経験を共有したいですか?

泉さん:大きな造形ができることです。私自身も経験しましたが、ソフトウェアのオートでサポートができるので、初めての人でも扱いやすいと思います。たくさん造形できるので造形エリアも今のところ不満はありません。イギリスの企業のプリンターなので、困ったときのサポートに不安がありましたが、3DPCさんが間にいるから安心です。放置されない。かまってくれます(笑)。導入時にトラブルがあったときも、いろいろサポートして頂いたので安心して使えています。

LC Magnaで造形した大型部品

5. 想像もしなかった医療分野へ進出

3DPC:LC Magnaの導入によって、どのような新しい製品やプロジェクトが可能になりましたか?

泉さん:医療系の製造はどうしてもカスタマイズが必要で量産ができない分野なんです。人にあわせた形にする必要があるので。そこで、人にあわせてすぐにカスタマイズしたものを造形できるLC Magnaはすごいメリットがあると思います。機械のスペックに合わせて作れるものを考えるのではなく、スペックを応用してできることを考えていくようになりました。

3DPC:今後のLC Magna利用の展望として、どのような方向性や改善、事業の展望をお考えでしょうか。

村岡さん:詳しい内容はお話しできませんが、とある大学と一緒に医療環境や介護施設関連で3Dプリンターを活用した製品を開発予定です。LC Magna導入前は、医療分野は全く頭にありませんでした。LC Magnaはカスタマイズに強いことがわかったので、医療分野にも進んでいきたいです。

そして最終的には、社内にてつくりたい製品全てを自分たちで作ることができたらいいなと思います。加工業者に依頼して部品を作ってアセンブリしていますが、自社で部品の設計から造形までできることが理想形かなとおもいます。

3DPC:今回取材を引き受けていただいた株式会社ニューエラーでは、受託サービスを実施しています。LC Magnaを活用して部品製造を行っており、協働ロボット用保護カバーから、フィンガーカバー、吸着用フレーム、小ロット生産まで幅広く対応しています。ご興味のある方は下記よりお問い合わせください。

・お問い合わせ:3dp@gbp.newera.co.jp

・受託サービス詳細:https://www.newera.co.jp/pdf/other/3Dprinter_240617.pdf

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