3Dプリンターによる量産が可能になれば、生産性の向上を期待できます。
実際に、世界に名を馳せる企業も、3Dプリンターによる量産に取り組んでいます。
とはいえ「自社製品の量産に3Dプリンターを活用できるのかどうかよくわからない」というケースもあるでしょう。
そこでこの記事では、どのような現場が3Dプリンターによる量産に適しているのか、具体的な量産事例とともに解説します。
3Dプリンターを活用することによって、より効率的に製品を量産できるケースがあります。
3Dプリンターによる量産に適しているのは、次のような場面です。
・カスタマイズ製品を量産する必要があるとき
・スピーディな量産を求められるとき
・需要の変動をともなう量産に対応したいとき
・複雑なパーツを量産したいとき
「受注生産」と「大量生産」という、一見すると相反してみえる2つの要望をかけあわせた「マスカスタマイゼーション」という製造方法があります。
顧客から寄せられる要望に個別に対応しながら製品を量産することは、簡単ではないでしょう。
とはいえ、製品の付加価値を高めるためにも、マスカスタマイゼーションが求められるシーンは少なくないはずです。3Dプリンターは、このようなカスタマイズされた製品の量産に適しています。
3Dプリンターでは、設計データを3Dプリンターにアップロード・造形することによって製品を製造します。データを顧客のニーズに合わせて変更して造形するだけで、パーソナライズされた製品を簡単に製造することが可能です。
スピーディな量産が求められる場面においても、3Dプリンターが活躍します。
たとえば、従来の射出成形ツールを使用する場合、金型が仕上がるまでは製造に着手することができません。
製造開始までに時間がかかるようでは、顧客の要望や消費者の需要にいち早く対応することは難しいでしょう。
その点、金型を必要としない3Dプリンターでは、設計データをアップロードするだけで製造を開始できます。適切な製造環境を整えれば、最小限の監視のみで高品質な製品を24時間製造することも可能です。
また従来の方法では、1つの製品に含まれる各部品に合わせて鋳造や溶接・プレス加工・切削加工といったさまざまな加工法を使い分ける必要があるため、設計段階から加工法に配慮しなければなりません。
一方、加工法による制約を受けにくい3Dプリンターを活用すれば、加工法ごとに品質や技術などを検討する工程そのものを削減できるため、迅速な量産につながります。
製品によっては、時期によって需要が大きく変動するケースもあるでしょう。一時的に大量生産する必要があっても、後に需要が減少し、その対応に苦慮することもあります。
3Dプリンターは、設計データさえあれば必要なときに必要な分だけ製品を製造することができます。そのため、急な需要増への対応はもちろん、需要が急に減少したときにも簡単かつ迅速に対応しやすいというメリットがあります。
未使用の在庫を残すことがなくなるため、製品の輸送や倉庫での保管にともなうコストや労力を削減することも可能です。
需要の増減にあわせて無駄のない生産体制を確立できる点は、3Dプリンターの強みといえるでしょう。
3Dプリンターは「複雑な形状が原因で他の方法では生産が難しい」という製品の量産にも適しています。
3Dデータをもとに積層方式で物体を形成する3Dプリンターは、細部が複雑な形状のパーツでも簡単に製造することが可能です。さらに、複雑なパーツを1つの設計に統合することもできるため、後で組み立てる必要がなくなります。
組み立てにかかる手間や材料コストを抑えつつ複雑なパーツを量産できる点も、3Dプリンターの強みといえます。
世界的に有名な企業も、3Dプリンターを活用した量産に取り組んでいます。
ここでは、3Dプリンターのメリットを活かして製品を量産している具体的な事例を紹介します。
世界で数百万足が販売されているadidasのランニングシューズ「4DFWD」も、3Dプリント技術を駆使して量産されています。
ひときわ目を引く格子構造のミッドソールは、1足(両足分)あたり約30分で造形できるとのことです。(出典:adidas|4DFWD)
CHANELの化粧品部門はフランスのメーカーと提携し、3Dプリント技術を活用したマスカラブラシを量産しています。
楕円形に5組の毛が植毛された非常に精密な形状は、3Dプリント技術だからこそ実現できた量産事例です。
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カミソリ製品のブランドであるジレット(Gillette)でも、3Dプリンターを利用してカスタマイズしたカミソリのハンドルを量産した事例があります。
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その他にも、自動車や航空・医療・日用品など、さまざまな分野において3Dプリンターを活用した量産事例があります。
【量産事例】
・ゴルフのパター
・フィギュア
・メガネフレーム
・バックパック
・タービンブレード
・医療用インプラント
・補聴器
・金属アクセサリー
・小売用ネームタグ
など
大手自動車メーカーBMWも、自動車部品の大量生産における3Dプリンティングの実現可能性を試す研究を始めています。
3Dプリント技術の活用シーンは、今後さらに増加していくでしょう。
また、別記事にて、3Dプリンターにおける量産事例をさらに詳しく書いています。
・試作だけで終わらない!Carbon社3Dプリンターで最終製品の量産に成功した事例を紹介
3Dプリンターによる量産には、いくつかの課題も存在します。
主な課題には以下の2つがあります。
それぞれ解説していきます。
3Dプリンターによる量産を行うためには、大型または多数の3Dプリンターを用意する必要があります。
また、新しいワークフローを設計・実装する際は、材料やオペレーティングソフトウェアも必要となるでしょう。
初期費用が高額になりがちな点は、3Dプリンターによる量産の代表的な課題に挙げられます。しかし、3Dプリンターの場合、製造にかかる条件が一度整えば、同じ条件で安定的に製品を量産することが可能です。
長期的にみればコスト減を期待できるため、経費バランスを考慮して導入を検討する必要があるでしょう。
繊細な動作にも対応できる3Dプリンターは、軽微な修正や材料の変更であっても造形エラーを起こす恐れがあります。
再現性という意味において、現状の技術では3Dプリンターによる量産には不向きな製品もある点は、今後の開発によって解決していくべき課題といえます。
もちろん、導入する3Dプリンターによっても特徴や強みは異なります。製品の量産のために導入を検討する際は、製造したい製品にマッチした3Dプリンターを選ぶ必要があります。
3Dプリンターを活用した効率的な量産法は、近年多くの企業が注目しています。
将来性のある分野であることから現状では課題も残るものの、適切な生産工法の選択肢のひとつとして期待されていることは間違いないでしょう。
弊社では、量産に最適な、Carbon社並びにPhotocentric社の3Dプリンターを販売しており、また3Dプリンターを使った受託製造も承っております。個数によって量産対応も行っておりますので、3Dプリンターによる量産を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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