有限会社ボーダック(以下、ボーダック)様は、ドローンのための映像転送装置やインフラ点検用ロボットの開発・販売を行っています。Japan Drone 2017でBest of Japan Drone Awardにノミネート、さらにオーディエンスアワードで最優秀賞を獲得しており、ドローン業界で有名な企業です。
ボーダック様では、Markforged社の3Dプリンターを使用することにより、高精度で軽量のドローンやロボット用パーツの製作が、低コスト・短時間で可能になりました。
私たち3DPCが、ボーダック様と出会ったきっかけは、2018年の「クルマの軽量化技術展」でした。私たちが自作したフルCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ロードバイクフレームを展示していたところ、ボーダック代表取締役社長の太田様の目に留まりました。
その理由は、
「国内で初めてMarkforgedで出力した自転車部品を見たからです。話してみると、自転車部品を製作するに際してのMarkforgedのメリットや限界を把握されていて、感心しました。」
以前は、他代理店から3Dプリンターを購入していたというボーダック様。なぜ他代理店から私たち3DPCを選んだのでしょうか。
太田様は、「やはり売り手が、自分でモデリングしたデータで、自社が販売している3Dプリンターを実際に使って出力しているので、ノウハウが蓄積されているだろうなぁと感じたためです。」と述べられています。
導入の背景:労働生産性の向上と時間短縮
ボーダック様では、3Dプリンター導入前は、アルミ切削の外注依頼によりパーツを製作していました。そのため、外注時の発注・検収・支払いなどの労務軽減が望まれていました。
そこでMarkforged社の3DプリンターMark Twoを使用することによって、外注から社内生産にシフトすることが可能になりました。
また、ボーダック様は、Mark Twoを導入する前までは工業グレードではない3DプリンターでABS樹脂を使用してパーツ製作を行っていました。ABS使用時は出力が安定しないことにより造形に失敗したり、出力物に対する精度が高くないため再設計の必要があったりと、時間のロスが目立ちました。さらには、
「以前のABSでロボット用ホイールを出力したものでは、高強度が出せないので、困っていました。それに見た目も、いかにもFDM・3Dプリンターで作成しましたという陳腐感が漂っていました…(写真)」
そこで、これらの改善を求め、Markforged社のMark Twoを使い始めました。
運用方法と効果:時間短縮とコスト軽減
【生産性の比較】
素材・工法 重量(g) 上記部品の製造時間 試作原価
アルミ切削 238 外注時 最短48時間(発注・検収作業含む) 外注時 30,000円
MARKFORGED 83 12時間 3,000円
FDM-3D-PRINTING
Onyx カーボン+ナイロン
155g軽量化
◆36時間 短縮
◆1/10 コスト削減
そこで、これらの改善を求め、Markforged社のMark Twoを使い始めました。
「0.1mm精度が確保できると、ドローンパーツも安心して出力できます。それと出力の安定性です。ONYX材料は、外気温にあまり影響されないので、ABSでありがちな反り対策を考えなくてもいいのがすごく楽です。」
太田様が評価するMark Twoの利点は出力の安定性、そしてなにより、その高い精度です。ABS使用時の精度では叶わなかった滑らかさが実現し、モーターが3Dプリントした部品にスムーズに入り込みます。(写真5)また、出力時の失敗が大幅に減り、時間の無駄もなくなりました。
(写真6)ドローン用のモーターマウントと安全ガードを兼用した部品です。モーターマウント部分にカーボン長繊維をいれて、強度を確保し、安全ガード部分は、0.8mmの薄壁仕様として、弾力性を確保して墜落時のクッションとしています。任意の場所にカーボン長繊維をいれられる、メリットを活かした部品です。」
今後の展望
ボーダック様では、これからMark Twoの台数を増やし、さらにインダストリアルシリーズのX7も導入予定で、生産数ならびに大型部品の製造にも力を入れていきます。そこで、今後の3Dプリンティングの活用について、ボーダック様の展望を聞きました。
「小型モノコックフレームのドローンをCFRP 3Dプリンティングで製作したいです。現状では、大型ドローンばかりに目が行きがちですが、実際のクライアントの要望は、より小さくより軽いドローンが欲しいニーズが多いです。それは、工場やインフラ点検などの構造物内の飛行が求められているため、ドローンと構造物の接触や墜落の際に、構造物を破損させないためです。」
また、ボーダック様には、スポーツバイク事業部「SFIDA」があります。現在は、CFRP 3Dプリンティングによる自転車パーツ製作は行っていませんが、いろいろ構想をされているとのことです。さらに進化した3Dプリンターが開発されたら、自転車パーツ製作の開始も実現するかもしれません。
Markforged社3Dプリンターを取り入れることにより、より軽く高精度なドローンやロボットのパーツ開発が可能となり、さらに時間とコストの削減につながりました。CFRP3Dプリンティングにより様々な新しい挑戦の可能性が開かれ、今後のボーダック様のさらなる活躍に期待が高まります。