2022-07-25

Markforged社プリンターを使用した高精度なドローン用パーツ製作

有限会社ボーダック(以下、ボーダック)様は、ドローンのための映像転送装置やインフラ点検用ロボットの開発・販売を行っています。Japan Drone 2017でBest of Japan Drone Awardにノミネート、さらにオーディエンスアワードで最優秀賞を獲得しており、ドローン業界で有名な企業です。

ボーダック様では、Markforged社の3Dプリンターを使用することにより、高精度で軽量のドローンやロボット用パーツの製作が、低コスト・短時間で可能になりました。

写真1社内雰囲気

私たち3DPCが、ボーダック様と出会ったきっかけは、2018年の「クルマの軽量化技術展」でした。私たちが自作したフルCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ロードバイクフレームを展示していたところ、ボーダック代表取締役社長の太田様の目に留まりました。

その理由は、

「国内で初めてMarkforgedで出力した自転車部品を見たからです。話してみると、自転車部品を製作するに際してのMarkforgedのメリットや限界を把握されていて、感心しました。」

以前は、他代理店から3Dプリンターを購入していたというボーダック様。なぜ他代理店から私たち3DPCを選んだのでしょうか。

太田様は、「やはり売り手が、自分でモデリングしたデータで、自社が販売している3Dプリンターを実際に使って出力しているので、ノウハウが蓄積されているだろうなぁと感じたためです。」と述べられています。

導入の背景:労働生産性の向上と時間短縮

ボーダック様では、3Dプリンター導入前は、アルミ切削の外注依頼によりパーツを製作していました。そのため、外注時の発注・検収・支払いなどの労務軽減が望まれていました。

そこでMarkforged社の3DプリンターMark Twoを使用することによって、外注から社内生産にシフトすることが可能になりました。

部品サイズ:267x101x30mm 、部品体積85cm3の3D-CAD

MARKFORGED Onyx カーボン+ナイロンで製造した部品

また、ボーダック様は、Mark Twoを導入する前までは工業グレードではない3DプリンターでABS樹脂を使用してパーツ製作を行っていました。ABS使用時は出力が安定しないことにより造形に失敗したり、出力物に対する精度が高くないため再設計の必要があったりと、時間のロスが目立ちました。さらには、

「以前のABSでロボット用ホイールを出力したものでは、高強度が出せないので、困っていました。それに見た目も、いかにもFDM・3Dプリンターで作成しましたという陳腐感が漂っていました…(写真)」

そこで、これらの改善を求め、Markforged社のMark Twoを使い始めました。

(写真2)Mark Twoで出力した同様のホイール。端部分と接合部分にだけ、カーボン長繊維を配置して出力しています
(写真3)ABS樹脂を使用して他社3Dプリンターで製作したボット用ホイール

運用方法と効果:時間短縮とコスト軽減

【生産性の比較】

素材・工法            重量(g)     上記部品の製造時間             試作原価 

アルミ切削            238       外注時 最短48時間(発注・検収作業含む)          外注時 30,000円

MARKFORGED           83                       12時間                                                               3,000円

FDM-3D-PRINTING
Onyx カーボン+ナイロン

155g軽量化

◆36時間 短縮

1/10 コスト削減


そこで、これらの改善を求め、Markforged社のMark Twoを使い始めました。

「0.1mm精度が確保できると、ドローンパーツも安心して出力できます。それと出力の安定性です。ONYX材料は、外気温にあまり影響されないので、ABSでありがちな反り対策を考えなくてもいいのがすごく楽です。」

写真4)実際にタイヤを装着したもの。ビード部分も正確に嵌合しています

太田様が評価するMark Twoの利点は出力の安定性、そしてなにより、その高い精度です。ABS使用時の精度では叶わなかった滑らかさが実現し、モーターが3Dプリントした部品にスムーズに入り込みます。(写真5)また、出力時の失敗が大幅に減り、時間の無駄もなくなりました。

(写真5)3Dプリントした部品にモーターが入り込む様子

(写真6)ドローン用のモーターマウントと安全ガードを兼用した部品です。モーターマウント部分にカーボン長繊維をいれて、強度を確保し、安全ガード部分は、0.8mmの薄壁仕様として、弾力性を確保して墜落時のクッションとしています。任意の場所にカーボン長繊維をいれられる、メリットを活かした部品です。」

(写真6)CFRPパーツ

今後の展望

ボーダック様では、これからMark Twoの台数を増やし、さらにインダストリアルシリーズのX7も導入予定で、生産数ならびに大型部品の製造にも力を入れていきます。そこで、今後の3Dプリンティングの活用について、ボーダック様の展望を聞きました。

「小型モノコックフレームのドローンをCFRP 3Dプリンティングで製作したいです。現状では、大型ドローンばかりに目が行きがちですが、実際のクライアントの要望は、より小さくより軽いドローンが欲しいニーズが多いです。それは、工場やインフラ点検などの構造物内の飛行が求められているため、ドローンと構造物の接触や墜落の際に、構造物を破損させないためです。」

また、ボーダック様には、スポーツバイク事業部「SFIDA」があります。現在は、CFRP 3Dプリンティングによる自転車パーツ製作は行っていませんが、いろいろ構想をされているとのことです。さらに進化した3Dプリンターが開発されたら、自転車パーツ製作の開始も実現するかもしれません。

Markforged社3Dプリンターを取り入れることにより、より軽く高精度なドローンやロボットのパーツ開発が可能となり、さらに時間とコストの削減につながりました。CFRP3Dプリンティングにより様々な新しい挑戦の可能性が開かれ、今後のボーダック様のさらなる活躍に期待が高まります。

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