PBF方式(粉末床溶融結合方式)とDED方式(指向性エネルギー堆積法)の用途やメリット、デメリットをご紹介
金属3Dプリンター
February 12, 2025
指向性エネルギー堆積法(DED)は革新的な3Dプリンティング技術として製品開発の最前線で注目を集め、自動車や航空宇宙産業など幅広い分野で活用されています。
指向性エネルギー堆積法(DED)は、革新的な3Dプリンティング技術として、製品開発の最前線で注目を集めています。集束した熱エネルギーを用いて金属ワイヤーを高速で溶融・堆積させることで、小~大型部品の製造や既存部品の修復が可能で、自動車や航空宇宙産業など幅広い分野で活用されています。
指向性エネルギー堆積法(DED)には、高速造形や柔軟な材料選択といったメリットがある一方で、初期投資の高さや表面仕上げの課題などデメリットも存在します。
そこで本記事では、DEDの基本からメリット・デメリットまで、製品開発担当者に必要な情報を詳しく解説。また、LENSやMPA、WAAMなどDEDの種類についても、わかりやすく紹介します。自社の製品開発にDEDを導入すべきか、それとも外部委託すべきか、判断材料としてぜひ参考にしてください。
指向性エネルギー堆積法(DED)は、3Dプリンターの造形方式の一種で、集束した熱エネルギーを用いて金属ワイヤーを溶融・結合・堆積して三次元的な形状を形成する技術です。
レーザーや電子ビームを熱源として使用しており、高速で小~大型部品を造形できます。既存部品に対しても形状を追加できる柔軟性があり、さまざまな材料を組み合わせることで特性を調整できる点が特徴です。
指向性エネルギー堆積法は、自動車産業や航空宇宙産業を含むさまざまな製造現場で広く利用されています。
例えば、金型の補修や部品の修復、新規部品の試作など、多岐にわたる用途に対応可能です。
異種金属を組み合わせた複合材料の製造にも適しているため、ハウジング部品やガスタービンなどの大型部品の造形や補修にも効果的です。航空宇宙・造船・建築・エネルギー産業など、さまざまな分野での活用が期待されており、今後もその需要は増加するでしょう。
指向性エネルギー堆積法の代表的な3つの種類について解説します。
LENS(Laser Engineering Net Shape)は、レーザーを用いた指向性エネルギー堆積法です。ノズルから金属粉末を噴射しながらレーザーで焼結するため、高い精度と滑らかな表面仕上げができます。従来の粉末焼結方式と比べてLENSは溶融プールを事前に準備する必要がないため、材料費を大幅に削減できるのが特徴です。
また、造形スピードは約4倍と高速造形も実現しています。噴射する金属を切り替えることで異種金属を組み合わせられるので、多様な用途に対応できるのも魅力です。小ロット生産や金型製作に適しており、摩耗した部品の補修にも利用されています。
MPA(Metal Powder Application)は、音速の3倍程度の速度で金属粉末を噴射することで金属同士を結合し、造形する方式です。その造形方法から、超音速堆積法とも呼ばれています。形状によっては既存の金属3Dプリンターと比較して100倍以上の速さで造形が可能です。そのため、効率的な大量生産を実現できます。
また、熱源を必要とせず、圧縮加熱空気によって金属粒子を結合させるため、従来の方法では対応できなかった金属材料に適用できるのも特徴です。ただし、MPAはまだ新しい技術であり、対応する3Dプリンターを開発している企業は限られています。一般への普及には、まだ時間を要するでしょう。
WAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)は、ワイヤー状の金属材料をアーク放電技術で溶融し造形する方式です。ワイヤー材料は粉末材料と比較して安価で、粉末では実現困難なデザインにも対応できる柔軟性があります。
一方で、造形精度は他の金属3Dプリント方式に比べて劣り、造形物の表面に凹凸が生じる傾向があります。そのため、表面の凹凸が問題にならない大型構造物などに利用されることが多いです。
なお、一部のプリンターでは粉末材料にも対応していますが、ワイヤー材料を使用する場合のメリットが大きいため、材料選択の際はそれぞれの材料の特性を理解して選ぶことが大切です。
指向性エネルギー堆積法の主なメリットは、以下の通りです。
DEDは造形時間が短いため、小~大型部品の製造時間を大幅に短縮できます。また、異種金属や複合材料の使用も可能で、耐久性の高い造形物や異なる材料を組み合わせた金属の造形にも対応しています。
そのほか、レーザークラッディング技術を用いることで、部品の表面を耐摩耗性に優れた素材でコーティングし、摩耗した部品や金型の補修も可能です。融点の高い合金にも対応できるため、残留応力の影響やコスト・造形時間の低減が期待されています。ただし、使用する材料や結合方法によって造形物の特徴や精度が異なるため、目的に合った方法や設備を選択することが重要です。
指向性エネルギー堆積法の主なデメリットは、以下の通りです。
DEDによる3Dプリントには専用設備が必要となるため、初期費用が高く操作には専門的な知識と技術が求められます。
また、他の造形方式と比較して精度や仕上げ面で劣る点もデメリットです。特に、表面の仕上がりが粗くなりやすく、積層痕が残る傾向があり、再現性や寸法精度においてもパウダーベッド方式には劣ります。チタンなどの活性金属を使用する際は、溶融・凝固過程で酸化による金属劣化が発生するリスクがあります。これらのデメリットを理解したうえで、自社のニーズに最適な方法を選択することが大切です。
ここからは、指向性エネルギー堆積法(DED)を採用したおすすめの3Dプリンターを紹介します。
Meltio M600は、M450と比べて大型の造形が可能な商業用の3Dプリンターです。
M600に最適化されたソフトウェア「Meltio Horizon」を搭載しており、造形に関する設定や調整がしやすいのが特徴です。ステンレスやチタンなどの基本的な素材のほか、SKD材にも対応しており、金型の補修や溶接機としても利用されています。
造形可能サイズ:300 x 400 x 580 mm
導入費用:要問合せ
次世代金属3Dプリンター「Meltio Robot Cell」も大型積層造形(LFAM)に対応しています。
金属3Dプリンターに必要な全ての設備を一体化した画期的な3Dプリンターで、導入にあたって煩雑な設計や準備、セキュリティ対策、配線工事などは不要。設置後すぐに部品製造を開始できます。中核となるMeltio Engine Robotは、1mを超える大型部品の造形、修理、そして鍛造品に匹敵する強度を持つクラッディング処理に対応。製造時間とコストを大幅に削減します。材料には金属ワイヤーを使用し、SKD材を用いた金型補修や全自動溶接機としての活用も可能。特に溶接工不足が深刻な製造業にとって、生産性向上に貢献するソリューションとして期待されています。
造形サイズ:1000 x 1000 x 1000mm
価格:お問い合わせください
Meltio M450は、小~中サイズの造形が可能な3Dプリンターです。
指向性エネルギー堆積法を採用しており、チタンやステンレス、銅合金やアルミなどさまざまな素材に対応しています。また、3Dプリンターには独自の生成ソフトがインストールされており、初心者でも扱いやすいのが特徴です。
造形可能サイズ:145 x 168 x 390 mm
導入費用:要問合せ
指向性エネルギー堆積法(DED)は、革新的な3Dプリンティング技術で、高速造形や柔軟な材料選択が可能です。自動車や航空宇宙産業など幅広い分野で活用され、小~大型部品の製造や既存部品の修復にも適しています。
一方、初期投資の高さや表面仕上げの課題などのデメリットも存在します。高品質で適切な造形を実現するには、これらの特性を理解し、自社のニーズに合った適切な業者を選択することが大切です。
具体的なイメージが持てるように、3Dプリンターやフィラメント製造機、表面処理装置、造形品などを見て触ることができる工場見学を開催しております。
ご興味のある方は是非お申込みください。