要求の厳しい複合部品やCNCフライス加工部品の開発・製造を担うConnova社は、Caracol社のロボットアーム式大型樹脂3Dプリンター「Heron AM」を用いて、オートクレーブ用の型を3Dプリントし、その型からドローン機首を製造しました。Connova社としては初めての取り組みとなり、従来製法と比較すると「Heron AM」はリードタイムを50%短縮し、さらに廃棄物を40%削減できています。
この記事では、Connova社によるオートクレーブ用の型製造の事例紹介、および「Heron AM」のメリットをご紹介していきます。
従来オートクレーブ用の型は、CNCによる機械加工や工具を扱う手作業などを含め労働集約的な方法で製造されてきました。Caracol社はConnova社およびFormbar社と協力し、Connova社の複合材を用いたドローン機首などの部品製造にLFAM技術※1 が搭載された「Heron AM」 を採用しました。
Connova社から提供された3Dデータを3Dプリンティング用に最適化(図1)し、最適なスライス戦略を設定、そして「Heron AM」でオートクレーブ用の型を造形しました。
Caracol社の押出機「High Flow」※2 を使用したことで、1個あたり15時間で130kgの重量をもつ型を2個造形することができました。DAHLTRAM C-250 CF(炭素繊維入りポリカーボネート)などの高性能複合材料の押出成形により、型は約135℃の高温のオートクレーブと6barの圧力に耐えることができています。型の表面は、航空宇宙産業の要求と公差を保証するため、CNCで機械加工(図2)を施し表面粗さ0.8μm、寸法公差0.1mmを達成しました。最後にプリプレグ(図3)を使用して、ドローン機首(図4)を製造しました。
・サイズ:1100 x 1100 x 900 mm
・重量:260 kg/個
・ノズル径:12 mm
・造形時間:30時間
・重量削減率:50%
・廃棄物の削減率:40%
・リードタイムの短縮率:50%
・コスト削減率:30%
※1:LFAMは「Large Format Additive Manufacturing」の略で、従来の積層造形技術と比較してハードウェア・ソフトウェア・自動化が統合された、大型サイズを造形できる新しい技術のことをいいます。この技術は、建築や建設、自動車、航空宇宙、海洋、鉄道などの厳しい要件が求められる業界で注目を集めています。LFAMは、すべてのものづくりにおける、デザインの柔軟性と作業の効率性を向上させる技術になると期待されています。
※2:頑丈で生産性の高い押出機です。幅広い材料で高品質な造形を実現。また造形効率がよいため、リードタイムを大幅に短縮します。
本記事でご紹介した、オートクレーブ用の型を弊社工場にて展示しております!ご興味のある方は是非工場見学へお越しください。
また、3DPCの工場見学では具体的なイメージが持てるように、3Dプリンターやフィラメント製造機、表面処理装置、造形品などを見て触ることができます。詳細は、下記案内ページをご覧ください。
Connova社によって製造されたオートクレーブ用の型およびドローン機首は、Caracol社のLFAM技術ならびに「Heron AM」が多くのメリットを提供することを実証いたしました。メリットは下記のとおりです。
従来の型製造は時間がかかり、完成までに数週間から数カ月を要することも少なくありませんでした。LFAM技術を活用することで、複雑な型を1日から数日で製造できるため、メーカーは製品開発サイクルを加速することができ、さらに市場の需要にあわせて迅速に対応できるようになります。
3Dプリンティング技術は最終部品に必要な量の材料しか使用しないため、材料の無駄が最小限に抑えられます。つまり、環境保全に貢献すると同時に生産効率をさらに最適化します。
LFAM技術は、オートクレーブ用の型製造における大幅なコスト削減が期待できます。従来の製造方法では、高価な機械、熟練した労働力、大規模な後処理工程を伴うことが多いです。一方、3Dプリンティングは複雑な型を自動化された1つの工程で製造できるため、手作業の必要性を最小限に抑えコストを削減できます。
大型の型は1つの単体部品として造形できるため組み立ての必要がなく、複数の部品を接合することで発生する可能性のある構造的弱点のリスクを軽減できます。その結果、より頑丈で耐久性のある型ができ、長期的なコスト削減に貢献します。
LFAM技術が提供する柔軟性により、設計者やエンジニアは複雑な形状を探求し型の設計を迅速に反復することができます。形状、アンダーカット、内部構造を自由に試すことができるため、以前は実用的でない、またはコストがかかると考えられていた型を製造できます。その結果、メーカーは安全性を維持しながら設計の限界に挑戦し、性能向上のために部品を最適化することができます。また、反復プロトタイピング機能により、製品開発におけるプロセスがより機敏になります。設計者は、実際の性能に基づいて型の設計を迅速にテストして改良できるため、最終製品の品質が向上し開発リスクが低減します。
Caracol社の「Heron AM」は、オートクレーブ用の型およびドローン機首の製造において、効率や費用対効果にとどまらずさまざまなメリットを提供することがわかりました。
3DPCでは、今回紹介した「Heron AM」の機器販売に加え、同機器を活用した受託製造を行っています。是非お気軽にお問い合わせください。
・メール経由:info@3dpc.co.jp
「Heron AM」は、最大4mサイズの製品の造形を可能にし、さらにシステムを延長すれば最大で幅12mまで造形が可能です。造形ヘッド、ペレットの乾燥装置、ソフトウェアなど造形を開始するために必要なすべてが揃っています。また、幅広い高性能ポリマーから複合材料、リサイクル材料まで対応しており、ペレットから直接造形できるため材料費を大幅に削減できます。ペレット材によって生じる表面のざらつきも、付属のツールで削ることで滑らかな表面に仕上がります。
・メール経由:info@3dpc.co.jp
3DPCでは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。